科学依拠型産業の分析

執筆者 玄場公規  (芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科助教授) /玉田俊平太  (研究員) /児玉文雄  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2005年3月  05-J-009
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概要

基礎研究による科学的発展が企業の技術開発に大きな影響を与えていることは良く知られており、基礎研究と技術開発のリンケージに注目が集まっている。この点、著者らは、既に、特許の論文引用の件数(サイエンスリンケージ)を技術分野ごとに分析し、バイオ分野の特許のサイエンスリンケージが著しく高いことを示した。この分析をさらに進めて、本研究では、日本の産業分野別に技術開発がどれだけ科学に依存しているかを定量的に明らかにする。このような依存度は、科学研究支援などの科学技術政策的観点及び新規産業創出などの産業政策上も極めて重要な情報であるが、従来は産業別の研究開発費比率などを元に科学の依存度の議論が行われていた。この点、本研究で分析するサイエンスリンケージは、各産業の技術開発がどのように科学に影響を受けているかを直接分析するものであり、科学依拠型産業を明確に考察することが可能である。分析の結果、医薬品産業、食品産業、化学産業のサイエンスリンケージが高く、その他の産業のサイエンスリンケージは低かった。この分析の結果は、産業別の技術開発の特性が大きく異なることを示しており、産業政策の立案においても、このような産業別の差異を認識すべきことが示唆される。