小規模企業の退出

執筆者 原田信行  (筑波大学大学院システム情報工学研究科講師)
発行日/NO. 2005年3月  05-J-006
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概要

本稿は、主に2003年11月に実施された「小規模企業経営者の引退に関する実態調査」の結果を用いて、日本の小規模企業の退出行動について分析するものである。一般的に、企業の退出(特に倒産以外のケース)を事後的に把握し、広くその経営者に対して調査を行うことは困難である。しかし、同調査では、小規模企業共済制度の契約者を対象とすることにより、この問題を克服している。調査の結果から、まず、小規模企業は経済状況の悪化を直接の理由とする退出(「経済的退出」)以外にも様々な理由によって退出している(「非経済的退出」)ことが確かめられた。また、両者の性質の違いを検証するプロビット・モデルを推定した結果、相対的に若い場合、男性の場合、金融機関からの借入がある場合、売上が減少傾向にある場合などに経済的退出が生じている傾向が強いことが示された。さらに、退出後の経営者の就労状況について、再び経営者や被雇用者になるケースも相当程度存在していること、経済的退出の場合のほうが再就労する、特に被雇用者として再就労する比率が高いことなどが示された。これらの結果は、退出研究において経済的退出と非経済的退出の両者を区別して分析することが重要である可能性を示している。