商社金融の動向
企業間信用と貸付金との関係

執筆者 植杉 威一郎  (研究員)
発行日/NO. 2004年8月  04-J-041
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概要

「商社金融」と言われるように、総合商社が多様な与信手段を有する点に着目し、企業間信用と貸付金の関係についての新たな知見を得る。事業会社が与える企業間信用と金融機関による貸付金の関係に係る仮説は、事業会社と金融機関という主体の違いに着目するもの、企業間信用と貸付金という手段の別に着目するものに大別される。しかし、Petersen and Rajan (1997)など実証分析では、与信主体、与信手段の違いに基づく仮説のいずれを検証しているか必ずしも明らかではない。そこで、本稿では、新たに利用可能になったデータも用いて、主体と手段の差異が、それぞれ企業間信用と貸付金の関係に及ぼす影響の程度を調べた。同じ主体が与えるものでも企業間信用と貸付金は正反対に動く一方、異なる主体が与える貸付金でも企業間信用の動きに同じ反応を示す場合がある。与信手段の性質の違いが、主体の違いよりも企業間信用と貸付金の関係に顕著に影響する点は、先行研究では明確に指摘されておらず、今後の企業金融の担い手や手法を考える上でも有用である。