日本の得意産業とは何か:アーキテクチャと組織能力の相性

執筆者 藤本隆宏  (ファカルティフェロー) /延岡 健太郎  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2004年8月  04-J-040
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概要

前半は、製品アーキテクチャと組織能力の相性から、企業業績が影響されることを概念的に議論した。擦り合わせ(インテグラル)型の製品アーキテクチャを持っている場合には、統合能力と相性がよく、組み合わせ(モジュール)型であれば、選択能力と相性が良い。日本企業の国際競争力の源泉となる組織能力は、「統合能力」であり、逆に弱いのは「選択能力」である。擦り合わせ型であれば、部品間の調整によって製品の機能が向上する。日本企業の統合能力とは、その調整を効果的・効率的に実施する能力なのである。逆に、製品の目標機能を達成するために要素部品間の調整があまり必要のないモジュール型製品の場合には、最適な部品を世界で調達してくる選択・組合せ能力が効果的である。選択能力は米国企業が強い。

製品のアーキテクチャに加えて、環境の不確実性についても、組織能力との相性を考える上で重要な要因となっている。不確実性とは、選択すべき事業、製品、技術の範囲が広く、しかもどれを選択するのが良いのかがわかりにくい状況である。取捨選択や組合せ方に関する不確実性の高さは、モジュラー型製品の特徴として表れやすい。つまり、不確実性が高くモジュール型製品であれば、選択能力が重要なのである。後半の実証研究では、高い事業の不確実性に直面している日本企業の多くが、選択能力に欠けているために、企業業績が低いことがわかった。これについては、2000年前後の家電・情報機器企業の低業績が象徴的である。