製品開発の組織能力:日本自動車企業の国際競争力

執筆者 延岡健太郎  (ファカルティフェロー) /藤本隆宏  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2004年8月  04-J-039
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概要

自動車の製品開発の生産性を、日米欧間で国際比較を実施した結果を報告する。本調査は1985年にハーバード大学で始められた。初回の調査では、80年代のデータが分析され、その結果として日本企業の優位性が藤本・クラーク(1993)によって詳しく報告された。その後、1995年と2000年の2回にわたり90年代以降のデータ収集をおこなった。本稿は、それら20年間にわたるデータを統合的に分析し、重要点を報告するものである。結論としては、80年代に見られた、開発工数と開発期間で測定した開発生産性における日本企業の優位性は、2000年まで持続されていた。日本企業の組織的な統合・擦り合わせ能力は、欧米企業にとって模倣が困難なのである。根源的な問題のひとつは、欧米ではプロジェクトメンバーの専門化度が高く、職務範囲が狭いことである。この点は、労働市場の制度の問題であり、個別企業で大きく変えることはできない。これによって、参加メンバー数が多く調整が複雑となる。またプロダクトマネジャーについても、専門化度の高い欧米では、日本の重量級プロダクトマネジャーのように製品開発とマーケティング(商品コンセプト)の両方に責任を持つことは難しい。