財政ルール・目標と予算マネジメントの改革
ケース・スタディ(1):オーストラリア

執筆者 田中秀明  (コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2004年5月  04-J-033
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概要

1990年代半ばから2000年代前半に至るまで、オーストラリア経済は、OECD諸国の中でもトップクラスの水準にある。その好調な経済に支えられ、一般政府財政収支は1998年以降黒字を維持しており、一般政府債務残高(ネット)は2000年代半ばにはほぼゼロに近づいている。財政政策は、金融政策と同様、ルールに基づく中期的なフレーム・ワークの下で立案・遂行されており、その法的な基盤となっているのが予算公正憲章法(1998年)である。現在の健全な財政は、ルールの導入だけによるものではなく、1980年代半ばより続けられている予算マネジメントの改革によるところが大きい。それは、トップダウンによる支出総額のコントロールとボトムアップによるミクロの資源配分・支出効率化をバランスさせるものであり、従来の伝統的な予算編成プロセスを大きく変えた。こうした改革と財政の健全化を促した背景には、経常収支の悪化等対外的な不均衡に対する懸念があった。

2000年代に入り、財政黒字下で財政規律を維持することは容易ではなくなっている。今後は、人口の高齢化に対応して、財政の持続可能性を担保しながら、医療・教育等の公的サービスをより効率的・効果的に供給することが求められており、それを実現するための予算マネジメント、特に、90年代末に導入された発生主義予算システムの改善、アウトカム・アウトプットの評価の充実等が重要である。