創業時の流動性制約と創業動機、政策金融の効果

執筆者 安田武彦  (コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2004年4月  04-J-032
ダウンロード/関連リンク

概要

本論は、創業規模の決定要因について我が国のデータセットを用いて分析を行うものである。分析からは、年齢、高学歴、親の職業(会社経営)、自己の事業経験、創業時の保有資産が創業資金規模に有意に正の影響を与える一方、独立型創業は創業資金規模に有意に負の影響の影響を与えることがわかった。さらに「社会貢献」、「資産活用」、「他者の影響」、「社会的評価」を動機とする創業は創業資金規模が大きくなる反面、「自己裁量権」、「賃金不満」、「生涯勤労」、「就職無し」、「ゆとり志向」を動機とする創業は創業資金規模が小さかった。

公的機関の資金利用者についてはそうでない者に比べ、特に金融機関から借入を行っていない場合に有意に創業規模が大きくなることが分かった。このことは、創業時に流動性制約が存在する可能性があること及び創業時の資金面での政策的助成が創業規模拡大に有効であることを示唆している。

また、本論では創業資金規模が創業後のパフォーマンスにどのように影響するのかについて検証した。分析からは創業者の属性や創業業種を考慮した場合においても、従業員成長率で測った起業のパフォーマンスに対して創業資金規模が正の影響を与えることがわかった。このことは、雇用拡大という面から見る限り政策的に創業資金規模を拡大出来るようにする政策が妥当性を有することを示唆している。