財政問題のストック分析:将来世代の負担の観点から

執筆者 高橋洋一  (コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2004年3月  04-J-019
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概要

公的年金や公共投資などの多くの政策は、将来の複数年度に及ぶ効果を分析することが政策決定に重要である。このような長期分析を可能にするために、将来補助金を含む財政ストック・データをバランスシートで表す手法を提示し、公的年金問題と道路公団問題という現在直面している問題に適用する。

公的年金について、今回の改正でマクロスライド方式の導入によって維持可能性に一定の改善がみられ、債務超過額は約800兆円から約600兆円へと減少している。保険料方式か税方式という議論には意味がなく、社会保険庁は税務当局と統合することが望ましい。なお、改善したとはいえ依然として維持可能性は盤石ではなく、債務超過額の対GDP比は、アメリカで0.4%であるが、日本で1.2%である。

道路関係4公団は債務超過ではない。ちなみに道路公団で3~5兆円の資産超過である。このため、これら4公団は国民負担なしで民営化できる。また、それらの大きな債務が問題とされるが、見合いの資産をもつので、債務のカットだけを行うべきでない。高速道路で問題であるのは、その高い高速通行料金であり、それらを引き下げることに民営化の意味がある。