執筆者 |
田中秀明 (コンサルティングフェロー) |
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発行日/NO. | 2004年3月 04-J-014 |
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概要
1990 年代における財政政策の立案・実施・結果について、OECD主要国とわが国の差は際立っている。諸外国は、財政ルール・目標の導入を初めとする予算マネジメントの改革を行い、経済成長にも助けられ、財政収支を黒字に転換させた。ただし、2000 年代に入ると、引き続き財政黒字を維持している国がある一方で、財政赤字が拡大している国もある。その差は経済の状態だけでは説明できない。予算マネジメントが重要である。本稿は、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、オランダ、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカにおける経験から、財政ルール・目標に関する教訓を導いている。
わが国でも、90 年代、財政構造改革法などの試みが行われ、現在も改革に向けた取り組みが行われているものの、それは、過去の失敗を十分に検証したものとはいえない。わが国の財政に関する最大の問題は、毎年の予算編成において、財政政策のマクロ経済へのインパクトを予測・検証し、そうしたマクロ分析に基づき予算をコントロールする枠組が欠けていることである。今後の急速な高齢化を乗り切るためには、予算マネジメントの改革を通じた政府のガバナンスの回復が急務であり、そのポイントは、政治的な意志決定システムの集権化と中期財政フレームの導入である。