執筆者 |
中林美恵子 (研究員) |
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発行日/NO. | 2004年3月 04-J-010 |
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概要
日本の財政赤字の原因は、景気循環というより構造的なものである。その赤字額は、すでに先進諸国で最悪を記録しているばかりか、目前には高齢化社会などの難題もかかえている。また大きすぎる日本の財政赤字は、この国の経済にとって不安定要因になっているほか、政府が必要な政策に資源配分できないという硬直性をも招き始めている。こうした八方ふさがりの現況のもと、日本の財政改革は進められねばならない。政府は限られた資源である国民の税金を効率よく活用し、さらに国民への便益を縮小しながら増税も行うという試練を避けて通ることができない。こうした財政改革には、納税者であり債権者の国民が、いかに現状を理解し将来の選択をするのかが鍵となる。これまでの日本の財政政策決定過程は、国民にとってきわめて不透明であり、責任の所在も不明確であった。また財政知識の豊富な専門家たちは、政府への貢献はしても国民に対する働きかけを十分に行ってこなかった。財政改革の国民意識を高めるには、政府と国民の間に位置する専門家たちの存在とその信頼性が欠かせない。国民は財政への理解を深め、選挙戦で政治家が示すアジェンダへの的確な意思表示をする必要がある。財政改革は、政府・国民・専門家たちの知の共有を基盤とした日本社会全体の力を試すものである。