執筆者 |
飯尾 潤 (ファカルティフェロー) |
---|---|
発行日/NO. | 2004年3月 04-J-007 |
ダウンロード/関連リンク |
概要
日本の議院内閣制は、官僚制を主体として構成される「官僚内閣制」とでも呼ぶべき公式政府組織と、それを補完する政治家による「与党」との並立を特徴とするが、財政規律の維持は前者の組織過程のよって果たされていたので、民主制の定着とともに官僚の政権、主体としての正統性が失われると、財政規律も失われることになった。この状況で財政再建を遂行するためには、単なる行政組織の変革だけではなく、超党派的な合意をもとに、安定した財政再建の政治的意志を確立することが必要である。そのうえで、財政運営システムも、目的指向型のものに変更することが求められるが、その際には、分散処理によって各省庁に権限が移行する側面だけではなく、それを統制する仕組みを内在化させて、割拠性の深刻化を防ぐ工夫が必要である。それは日本の官僚制における社会的利益の代弁者としての顔を押さえて、国益を追求する自律性ある集団としての顔を協調することが、先の超党派合意を担保する上でも必要だからである。