中小企業の存続と倒産に関する実証分析

執筆者 橘木俊詔  (ファカルティフェロー) /齋藤隆志
発行日/NO. 2004年2月  04-J-004
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概要

1990年代から続く不況の影響で、倒産件数は高水準で推移している。その一方、倒産の危機を迎えながらもそれを克服している企業もある。本稿では、これまでの財務諸表を中心にした倒産分析モデルから一歩進めて、倒産危機を迎えたときにどのような対策をとったかについての説明変数を中心に、倒産分析モデルを作成する。また、企業の特徴についても、財務諸表のデータのみならず、借入先や担保・保証の状況、また下請け企業か否か、経営者に就任した経緯はどのようなものか、といった様々な観点からのデータを使用し、さらに倒産したか存続したかの2値モデルに加えて、倒産と倒産回避後の企業の健全性を合計4レベルに分けたモデルや倒産した企業の負債総額を推計するモデルを分析し、より倒産と倒産回避について連続的な観点からとらえた。その結果、倒産危機に直面したときに経営改善の努力を行う企業ほど倒産しにくいこと、また一時的な資金繰りの対策をした企業ほど倒産しやすくなることが確認された。倒産危機に直面する企業は今後も多くなると考えられるが、資金繰りだけではなく経営努力によって企業を立て直す姿勢が必要であり、そのための支援策を今後考える必要があるだろう。