執筆者 |
樋口美雄 (ファカルティフェロー) /松浦寿幸 |
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発行日/NO. | 2003年12月 03-J-019 |
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概要
本稿は、経済産業省「企業活動基本調査」個票データを用いて、企業の事業組織の変更や海外直接投資を行った企業における雇用成長率・実質付加価値成長率・労働生産性上昇率が、これを行わなかった企業に比べ、時間の経過とともにどう変わっていくかについて分析するものである。本分析の特徴は、以下の3点に要約される。まず、第一は同一企業を複数年追跡し、事業組織を変更したり海外直接投資を行ったりした企業のその後の生産性や雇用の変化を追えるようにパネルデータを作成し分析した点である。第二は、それらの影響が時間の経過とともにどのように変化していくか、動学的な要素を考慮し分析した点である。とくに海外直接投資については、製造部門の直接投資なのか、営業拠点などそのほかの直接投資なのか、投資先の地域はアジアなのか、そのほかの地域なのかなどに分け、分析を行っている。第三は、サンプルの中から消えていく退出企業の影響についても考察している点である。分析の結果、事業組織変更を行った企業は、一度は雇用を大きく減らすものの、時間の経過とともにパフォーマンスの改善がみられ、やがて、事業組織変更を行っていない企業よりも急速に雇用減少率が縮小することが確認された。また、海外直接投資についても、とりわけ海外製造子会社を保有する企業では、企業グループ内国際分業により実質付加価値、労働生産性が高まり、雇用減少率も小さくなることが確認された。