対日直接投資:事業所・企業統計調査個票データにもとづく実証分析

執筆者 深尾 京司  (ファカルティフェロー) /共著  伊藤恵子
発行日/NO. 2003年2月  03-J-004
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概要

日本の対内直接投資統計には米国の統計と比較して欠点が多く、また統計の不備のためか、対日直接投資が少ない原因に関する実証研究はあまり多く存在しない。最近の国会における施政方針演説(2003年1月31日)で、小泉首相は対内直接投資残高を今後5年間に倍増する方針を打ち出したが、対内直接投資の実態や阻害要因が明らかでない状況で、日本政府が今後どのような具体策によってこの目標を達成するのか、不安が残る。

このような問題意識から本論文では、総務省(旧総務庁)『平成8年事業所・企業統計調査』の個票データの独自集計によって得た、3桁業種別の外資系企業従業者数統計を用いて、日本における外資系企業の活動を分析する。また日本の対内投資の規模を、米国のそれと比較し、日本の対外投資や貿易による財・サービス取引の規模との比較も行う。

我々の新しい統計によれば、日本における外資系企業の活動規模は、経済産業省(旧通商産業省)の『外資系企業動向調査』の中で報告されている値よりも格段に大きいことが分かった。また我々は、3桁業種別統計を用いて、クロス・インダストリーの回帰分析を試みた。外資系企業の活動のシェア(「外資系企業の浸透度」と呼ぶ)の決定要因を説明するモデルを推定した結果、非製造業においては民間企業の参入規制を始めとする投資障壁の存在や公的企業の存在が対内直接投資を阻害していることが分かった。