執筆者 |
岡崎 哲二 (ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2002年12月 02-J-021 |
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概要
近年、日本の銀行産業は、1920-30年代以来の大規模な統合の波を経験しつつある。この論文では、銀行統合が金融システムに与える影響を、戦前期の銀行統合のデータを用い、銀行のガバナンス構造と経営パフォーマンスの二つの側面に焦点をあてて検討した。第一に、銀行統合は、それが吸収合併・買収という形態で行われる場合、被吸収銀行の事業会社関係役員を排除し、役員兼任が銀行経営に与える負の影響を取り除く役割を果たした。第二に、銀行統合は預金吸収力を高め、預金保険制度が存在しない状況下において、金融システムの安定性に寄与した。他方で銀行の収益性に関しては統合のプラスの効果は見られず、新立合併については逆に強い負の効果が確認された。すなわち、銀行統合は短期的には預金吸収力の上昇を通じて金融システムの安定性に寄与したが、中長期的には収益性の悪化を介して逆に金融システムを不安定化させた可能性がある。