日本のバイオ・ベンチャー企業
-その意義と実態-

執筆者 中村 吉明  (コンサルティングフェロー) /小田切宏之
発行日/NO. 2002年6月  02-J-007
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概要

本論文では、バイオテクノロジー関連産業におけるベンチャー企業の意義を論じるとともに、質問票とインタビューによる調査を通じて、日本のバイオ・ベンチャー企業の実態を明らかにする。また、こうした調査を通じて、バイオ・ベンチャー企業育成のための問題点や取られるべき施策についても論じる。質問票調査において「起業時の障害」として多くあげられたのは、「スタッフの確保(研究者・技術者)」と「資金調達」という人的および資金的(物的)資源の獲得の困難さであった。スタッフについては、研究開発を主導的に行える博士号取得者に対するニーズが高いにも関わらず、これらの研究者は大学及び大手企業の研究機関等に偏在しており、ベンチャー企業での採用を困難にしている。資金調達については、支援施策として「研究開発補助金の充実」や「事業資金補助」が期待されている。しかも、量的な支援とともに、補助金執行の柔軟性の確保と事務的煩雑さの解消が多くあげられた。バイオテクノロジーのような科学知識の発展と密接に結びついた関連産業においてベンチャー企業が産官学連携の要として果たすべき役割を考えるとき、起業へのこうした障害を最小化すべく政策的対応が図られる必要がある。