インターネットによる情報通信産業の垂直非統合

執筆者 池田 信夫  (上席研究員)
発行日/NO. 2001年7月  01-J-001
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概要

インターネットの急速な拡大は、情報通信産業の構造に大きな影響を及ぼしつつある。その最大の特徴は、情報通信がサービス(論理層)と設備(物理層)に分断され、垂直統合されていた企業が「垂直非統合」される傾向である。その原因は、IP(Internet Protocol)による情報のカプセル化や要素技術のモジュール化などの技術的なアーキテクチャの変化に求められる。

この変化を本稿では「リアル・オプション」の理論によって整理する。急速な技術革新によってリスクが大きくなると、金融派生商品のように多様なモジュールを組み合わせ、オプションを広げてリスクをヘッジする必要が生じる。こうした技術革新によって、リスクを長期的関係によってプールする「日本型」システムの有効性は相対的に低下する。この変化は今後、全産業に波及することが予想されるため、新しいアーキテクチャに対応した産業構造の再構築が必要である。