日本のホワイトカラー部門の生産性は低いのか?:電気機械企業55社会による全要素生産性の計測

執筆者 中島 隆信/前田 芳昭/清田 耕造
発行日/NO. 1998年8月  98-DOJ-91
ダウンロード/関連リンク

概要

バブル崩壊後の不況期にあって、現在、不況の犯人探しが躍起になって行われている中、企業のホワイトカラー部門が容疑者として槍玉にあがっている。この議論の根拠は、「日本のホワイトカラー部門の生産性はきわめて低い」という命題である。この命題は、企業に対するアンケート調査やマクロ経済指標の見せ掛けの相関によってあたかも既に証明されたかのように扱われている。この論文は、簡単な生産関数モデルを用い、企業のホワイトカラー部門の全要素生産性(TFP)を計測しようという試みである。企業のアウトプットが製造部門とホワイトカラー部門の生産物の集計であると仮定した上で、企業全体のTFP(FTFP)から製造部門のTFP(PTFP)を差し引くことによってホワイトカラー部門のTFP(NTFP)を求めるのである。FTFPは『有価証券報告書』、PTFPは『工業統計表』(通産省)をデータソースとしてそれぞれ計測することができる。分析対象は日本の電気機械産業に属する55社であり、観測期間は1985年から1993年である。計測結果は注目に値する。この間、平均的な企業レベルで見ると、FTFPは年率0.56%で下落していたが、そのうちPTFPが-1.93%ポイントというマイナスの貢献を示す一方、NTFPは1.38%ポイントのプラスの貢献であった。この結果は、当該期間における日本の電気機械製造企業に関してホワイトカラー部門の悪評は当たらず、むしろホワイトカラー部門が企業の生産性の下落を下支えしていたことを示すものである。