輸入が国内生産に与える影響:企業パネルデータによる定量的分析

執筆者 冨浦 英一/内田 幸男
発行日/NO. 1998年4月  98-DOJ-90

概要

輸入が国内生産に与える影響を、ミクロデータを用いて定量的に分析する。生産量の輸入価格弾力性は、産業集計レベルでは大きくないが、企業レベルのパネルデータセットを構築して推定を行ったところ、同じ財であっても大きな推定値が得られた。さらに、産業により、また同一産業内でも企業により、大幅に異なる値をとることも明らかになった。この分散を各企業の価格と関連付けると、産業内で、輸入品により近い低価格帯の財を供給している企業の方が輸入価格弾力性が顕著に大きいという傾向が、財、推定法にかかわらず確認された。また、地域別輸入データを生産ミクロデータと結び付けて分析すると、外国企業が生産していると考えられる国からの輸入に対比して、日本企業が部品を供給していると考えられる国からの輸入については、部品の国内生産量が大きい企業ほど、強く輸入に反応して完成品を減産していることが分かり、逆輸入や国内生産の部品へのシフトが、輸入の国内生産への影響を変化させる可能性も示唆された。