バイオテクノロジー関連産業における産学共同研究

執筆者 小田切 宏之/加藤 祐子
発行日/NO. 1997年5月  97-DOJ-83
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概要

産学共同研究は、企業にとっては基礎研究の充実やネットワークの創出、大学にとっては研究資金の補充や企業における研究との交流、あるいは研究成果の産業への活用など、多くのメリットがあるとされている。特に、バイオテクノロジーの基本技術は大学における研究から生まれただけに、企業は専門知識を習得するために大学との関係を密接にせざるを得なかった。このため、バイオテクノロジー関連産業では、アメリカを中心に活発に産学共同研究が行われてきている。

このような背景を踏まえ、本稿では日本におけるバイオテクノロジー関連産業における産学共同研究の要因と効果の分析を行なった。第二節では、どのような企業が産学共同研究をおこなっているかを明らかにするため、企業ごとのバイオテクノロジー産学共同研究件数を従属変数とするトービット・モデルの推定を行なった。この結果、バイオテクノロジー分野における研究開発費が大きい企業ほど、またバイオテクノロジーに関連の深い産業にいる企業ほど、多くの産学共同研究を実施していることが分かった。第三節では、産学共同研究が特許出願にもたらした効果について明らかにするため、バイオテクノロジー関連のIPC(国際特許分類)ごとの特許出願件数を従属変数をし、産学共同研究ダミー、バイオテクノロジー分野における研究開発費、及びそれらの交差項を説明変数とするモデルをパネル・データにより推定した。この結果、産学共同研究を実施している企業ほど、バイオテクノロジー研究開発支出から限界的な特許出願性向が高いことが分かった。これは、産学共同研究そのものが生み出す成果に限らず、その成果が社内の他の研究陣にスピルオーバーすることにより関連分野における特許出願活動を活発化する効果があることを示唆しているものと思われる。