現地法人の生産活動が本社企業の輸出・逆輸入に与える影響について:電機産業企業パネルデータによる実証分析

執筆者 深尾 京司/中北 徹
発行日/NO. 1995年5月  95-DOJ-59
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概要

1980年代以降、日本企業の海外生産活動は急速に高まりつつあるが、これに伴って日本からの輸出が減り、あるいは逆輸入が増えて、国内の生産活動や雇用に深刻な影響をもたらすのではないかと言った、いわゆる国内産業の空洞化が懸念されている。本論文では、電機産業に属する本社企業とその現地法人について、理論モデルを提示した後、パネルデータを使って海外生産が本社の輸出と逆輸入に与える影響を分析した。従来の研究では、直接投資のデータの中に販売現地法人への投資が混入するという欠陥があった。この問題を解決するため、我々は生産現地法人に限定し、また、現地法人の生産活動の指標としてその売上から域外からの輸入を控除した値を用いて推定を行なった。分析の結果、アジアについては現地法人の生産活動を高めた本社企業ほどアジア向輸出額が増えたが、逆輸入を引いた純輸出については減少する傾向が見られた。まだ、北米については、現地法人が生産活動を高めた本社企業ほど北米向輸出が減少したことがわかった。これらの結果は、少なくとも企業レベルで見るかぎり、海外生産活動の拡大が本社の生産活動の縮小を伴う可能性が高いことを意味する。