製造業への参入の計量分析

執筆者 小田切 宏之/本庄 裕司
発行日/NO. 1995年3月  95-DOJ-55
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概要

本稿は、『工業統計表』の企業に関するデータをもとに、日本の製造業における企業の参入の状況、および企業の参入と市場構造との関係を分析する。

日本の製造業における企業数は低調な増加傾向が続いている。産業別では、繊維工業、鉄鋼業等で減少傾向が続くが、電気機械等では増加傾向が続いているなど、企業の参入は産業によりかなりの相違が見られる。また、企業の参入が多い産業ほど市場の成長性が高い傾向が見られる。

現実の利潤率と均衡利潤率との元離に応じて参入が起こるとしたモデルを用い、企業の参入と市場構造その他の要因との関係を回帰式により分析した。その結果、市場の成長性や市場規模が大きい産業ほど企業の参入が多く、参入障壁である規模の経済性障壁、必要資本量障壁が高い産業ほど企業の参入が少ない傾向があることがわかった。

次に、軽工業産業における参入の反応速度が重工業産業よりも速いことから、産業により参入の反応速度が異なる可能性を示した。また、設備投資における部分調整モデルを援用したモデルにより、産業別に企業数の調整速度を求めたところ、重工業産業を中心に企業数の調整速度が遅く、必要資本量障壁の高い産業ほど企業数の調整速度が遅い傾向が見られることがわかった。