東アジア経済の相互依存関係の深化に関する考察

執筆者 石井 清彦
発行日/NO. 1990年11月  90-DOJ-22
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概要

本稿は、東アジア諸国の貿易を通ずる相互依存関係の実態を検証するとともに、経済的相互依存や貿易面での結び付きが最も強い地域であると考えられるECとの比較を通じて、その相互依存関係が、どのような段階にあり、どのような方向に向かっているのかを分析し、東アジアの市場一体化の可能性を展望するものである。

主な結論としては、(1)東アジア地域は、その域内において経済的相互依存関係を急速に深めつつあるのに対し、他の先進地域である米国、ECとの相互依存関係は相対的に水準も低く、緩やかな伸びにとどまっていること、
(2)経済的相互依存関係のベースをなしている貿易関係については、東アジア域内の各地域(日本、NIES、ASEAN、中国)とも輸出入にわたって東アジア地域との貿易の比重を高めつつあり、その対象商品も工業製品、特に機械類の比重が急速に高まっていること、
(3)さらに以上をECと比較すると、東アジア諸国の1987年の経済的相互依存関係は、EC諸国の1967年(EC発足年)の経済的相互依存関係にほぼ匹敵すること、また、直近時点の貿易商品構成を比較しても、東アジアはECの貿易商品構成に近づきつつあることがあげられる。

東アジアは、歴史的にも、民族、言語、文化、習俗や社会制度の面においでも、また、経済の発展段階においても大きく異なった諸国の集合体であるが、無数の障害を乗り越えて、貿易的な結びつきが年々高まりつつあることは事実であり、 そのダイナミズムには、目を見張らせるものがある。それは、東アジアが内発的なエネルギーにより、世界市場における一つの有力な経済圏として発展する可能性を示唆するものであろう。