日本の鉄鋼原材料需給

執筆者 小石 雄一
発行日/NO. 1990年2月  90-DOJ-11
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概要

鉄の生産においては、鉄分を多く含む鉄鉱石を高熱によって溶解し、鉄鉱石中の不純物や酸素を取り除いて鉄分だけを取り出すことが基本である。鉄の原材料は鉄鉱石や鉄くず、コークス、石灰石やごく小量ではあるがマンガン鉱石、クロム鉱石などが副原料として使用されている。

本稿では、これらのうち、「鉄鉱石」、「鉄くず」、「原料炭」の3つの基本的な原材料について述べることとする。

第1章で鉄鋼生産と投入原材料の関係を述べたあと、第2章では鉄鉱石、鉄くず、原料炭の需給構造と最近の動向について論じた。鉄鉱右の消費量は1960年代に入って急増した。その後オイルショックを経て鉄鋼需要が減退したことにより低迷している。鉄くずの最近の動向をみると、全体の供給量は増加傾向にある。調達先をみると、国内くずの増加がめだっている。原料炭はソース別のシェアには大幅な変化はあるものの鉄鋼石とほぼ同じ傾向で推移している。

第3章では今後の我が国の鉄鋼原材料需給について、特に1995年度の鉄鋼原材料の需給予測について言及した。現在の転炉、電気炉の製鋼法が変化せず、両製法の構成比も現状維持と仮定すると、1995年度の鉄鋼原材料の需要量は、鉄鋼石が9852万トン、鉄くずが3018万トン、原料炭が6352万トンとなる。これら、鉄鋼原料のソース別の輸入量は、中長期的には大きな変化はないものと思われるが、開発輸入など新規開発の結果、低価格・安定供給がはかられれば、そのソースからの調達量は増加するものと思われることから、長期的にはシェアに変化が生じることもあろう。