日本の鉄鋼需給見通し

執筆者 後藤 文廣/藤堂 一俊
発行日/NO. 1990年2月  90-DOJ-10
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概要

鉄は重要な基礎素材として、我が国の経済構造と深く関わり合っている。本稿は、情報化・サービス経済化の進展や1985年以降の円高等、日本経済が大きな変貌を遂げつつある中、我が国の鉄鋼需給が中長期的にどう変化していくのかを、できるだけ定量的に分析しようとするものである。

第1章及び第2章で問題意識及び鉄鋼生産の現状について述べたあと、第3章では、鉄鋼需要予測手法について論じた。既存の予測モデル(鉄鋼集約度指標、SWIP指標等)では欠落している、鉄鋼需要と経済構造の関係という考え方を、産業連関分析の手法を用いて明示的に取り入れた新しいモデルを開発した。

第4章ではこのモデルを用いて、1995年頃の我が国の鉄鋼の需給見通しを行った。またこの見通しを検証するため、主要需要産業(建設、自動車、電気機械)の担当者のヒアリングを行った。

結論としては、中長期的には日本の国内鉄鋼需要は産業構造の変化等を反映して低下する。また純輸出も中進国の国際競争力の強化等を反映して低下することになる。

本モデルによる予測結果は、関連業界による需要見通しによってほぼ裏づけられ,ており、特に鉄鋼需給と国内経済との関係を見るには適当なモデルであると考えられる。ただし輸出入の予測に関しては、ベースとなる世界の鉄鋼貿易モデルが確立されていないこともあり、これは今後の課題である。