NC工作機械の技術普及:旧技術による補完的効果

執筆者 原田 勉/米川 進
発行日/NO. 2000年3月  00-DOJ-100
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概要

本稿の目的は、日本の資本財産業、特に、機械関連産業におけるNC工作機械の技術普及を分析対象とし、それがどのような要因によって規定されてきたのかについて実証的に明らかにすることにある。日本の機械関連産業におけるNC工作機械の技術普及では、比較的規模の小さい末端の機械加工業者にまで先端的なNC機が導入されている点に特徴がある。それを可能にした背景として、NC装置の高品質・低価格化が重要な役割を果たしていたのは疑いの余地はない。しかしながら、その一方で、NC工作機械の採用者側における技術吸収能力の高さも無視できない要因であると思われる。本稿の基本的な主張は、NC化以前の旧技術における学習、知識の蓄積が新技術の採用を促進する要因であったというものである。つまり、旧技術における技術的能力が新技術採用を阻害するのではなくそれを促進する機能を果たす。換言すると、この技術的能力を媒介として新・旧技術間にはある種の補完性が存在しており、それが技術普及に決定的に重要な役割を果たしていたというのが本稿の基本的な仮説である。

本稿では、1987年、1994年に各々、実施された「工作機械設備等統計調査」「特定機械設備統計調査」で収集されたデータを使用し、このような仮説について定量的に検討していく。さらに、本稿の発見事実の解釈及びそこから得られる産業政策上のインプリケーション等についても議論する。