繊維産業の産業調整施策

執筆者 岩田 悟志/松下 哲也
発行日/NO. 1988年12月  88-DOJ-4
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概要

本研究の目的は、我が国産業でも最も早く産業調整問題に直面し、現在も厳しい状況にある繊維産業を取り上げ、米国、英国での産業調整過程と比較しつつ、その調整過程と政策のあり方について検討することである。

本研究では、以下の調査、検討を行った。(1)戦後以来1970年代初頭までの紡績業、化繊・合繊工業を中心にした我が国の繊維産業の調整過程の調査、(2)朝鮮動乱ブーム後に生じた過剰設備への対応にはじまる戦後の一連の繊維対策とその実施状況の調査、(3)我が国と同様、先進国としての調整過程を経てきた米国と英国の繊維産業対策についての調査、(4)政府の政策とは別に、米国、英国で行われた繊維産業における買収・合併による産業の再編成の動きについての調査、(5)設備調整政策、輸入規制政策、産業再編成の三つの視点からの米英日3力国の比較及びそれぞれの繊維産業動向との係わりについての検討。

以上の調査、検討により本研究で達した結論は、第一に設備調整政策については、それのみでは、産業の中長期的な活性化には十分ではないということである。第二には、輸入規制政策についての効果の有無は、輸入規制の有効性の違い、国内市場への依存度の違い等の各国の事情に依存するということである。ただし、輸入規制については、輸入規制による競争力喪失の可能性、国内消費者の被る負担等の問題が一般的にある。第三は、産業の再編成については各国の市場環境が複雑に影響するため一概に評価を下すことは困難であるということである。