世界を席巻するモノづくり日本企業
GNT企業 増やすために

細谷 祐二
コンサルティングフェロー

何ごとにも前向きな揃い踏み企業だが、企業パフォーマンスはグローバル・ニッチトップ(GNT)企業に見劣りする。アンケート結果の多変量解析を行うと、補助金の多頻度利用者という点では同じだが、GNT企業と異なりユーザーの評価や問い合わせの増加につながらず、空回りしている可能性がある。

2つの条件

一連の分析からGNT企業を成功企業、それ以外のNT型企業は候補企業と考えることができる。GNT企業はNT製品を複数持ち、うち最低1つは海外市場でシェアがあるという2つの条件を満たす。ここから、GNT企業への脱皮を支援する政策が考えられる。

複数のNT製品という条件は製品開発能力の高さを示す。GNT企業はユーザーからニーズを持ち込んでもらい、他の企業や大学と連携しソリューションを出す。この「イノベーション・コーディネート機能」を企業間連携などの経験を積み身につけた。大企業ユーザーに育てられた側面もヒアリングからよみとれる。揃い踏み企業に不足するのは大企業も参加した企業間連携の機会である。磨くべきは、周りの中小企業を束ねて新製品を開発する能力だ。

支援側は候補企業を鍛えるため、補助金審査の際、ニーズが具体的に補捉されているか、製品開発のパートナーが確保されているかチェックする厳しさが必要だ。また、大企業参加のコンソーシアム型の研究開発プロジェクトの支援件数を増やし、意欲と能力のある中小企業の組み込みを条件とするのも一案である。

日本で作り輸出

ユタカ(大阪府東大阪市)は独創的な品質管理検査装置を次々送り出すGNT企業の中でも小さな巨人の代表だ。安田憲司社長はドイツのハノーバーメッセに毎年出展し、「体力的にしんどいが、最先端ニーズなど得られるものも大きい。今年から息子に行かせる」と言う。「12年、日本の中小企業は30社ほど出展したが、中国は460社出ていた。これではいかん」と日本企業の奮起を促す。

GNT企業はヒアリングで国際見本市の効用を説き、アンケートで出展支援の充実を望む比率が58.4%と際だって高い。一方、揃い踏み企業は海外売上高比率が低く、出展支援要請も42.0%と平均以下で、「内弁慶」の可能性が高い。

留学生を活用

揃い踏み企業など候補企業には、他流試合の場、国際見本市のへの出展を奨励すべきだ。そのため支援予算拡充に加え、前年から申し込みが可能となるよう運用改善が必要である。また、GNT企業は日本への留学生をうまく活用している。優れた中小企業と留学生はウィン-ウィンの関係を築ける。体系的なマッチングの施策ニーズは強い。

候補企業には、日本で作り輸出するGNT企業を目指してほしい。

2013年6月14日 日刊工業新聞に掲載

2013年6月28日掲載

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