昨日の首都圏・地震連続発生、来年前半の首都直下型地震発生の予兆か…伊豆半島も要注視

藤 和彦
上席研究員

6月24日、首都圏で最大震度4を記録する地震が連続した。9時11分、千葉県南東沖でマグニチュード5.5の地震が首都圏に「縦揺れ」をもたらしたが、夜になると19時22分に伊豆半島東方沖でマグニチュード4.1の地震が発生した(NHKの19時台のニュース番組が午前9時台の地震を伝えている最中に緊急地震速報が鳴ったのは、印象的だった)。

そのニュース番組内で地震専門家は「2つの地震は震源が近く、なんらかの関係がある」と答えていたが、歯切れの悪い印象を拭えなかった。筆者は2月21日付の本コラムで「来年前半に首都圏直下型地震が発生するとの予測がある」ことをお伝えしたが、24日の2つの地震発生によって、その予測が当たる確率が上がったのではないかと考えている。

大方の地震学者が信奉している「プレートテクトニクス説」に疑問を感じている筆者が参考にしているのは、角田史雄埼玉大学名誉教授が提唱する「熱移送説」である。熱移送説をかいつまんで説明すると、以下のとおりである。

(1)熱移送説で主役を務めるのは、「プレートの移動」ではなく「熱エネルギーの伝達」である。その大本のエネルギーは、地球の地核から高温の熱の通り道に沿って地球の表層に運ばれ、表層を移動する先々で火山や地震の活動を起こす。

(2)熱エネルギーの表層での出口の一つは南太平洋(ニュージーランドからソロモン諸島にかけての海域)に存在し、南太平洋から出てきた熱エネルギーはPJ(インドネシアからフィリピンに向かい台湾を経由して九州へ)とMJ(フィリピンから伊豆諸島を経由して首都圏へ)という2つのルートで日本に到達する。

(3)熱エネルギーが伝わると熱のたまり場では噴火が起き、地盤に「問題」がある地点では地震が発生する。熱エネルギーの速度が一定であることから、火山の噴火から地震発生の予兆を捉えることが原理的に可能である。

熱エネルギーの移送が継続

以上が熱移送説の概略だが、九州に達するPJルートでは昨年6月に大阪府北部を震源とするマグニチュード6.1(最大震度6弱)の地震が、今月18日に山形県沖を震源とするマグニチュード6.7(最大深度6強)の地震が発生している(2月のコラムで「この地域で地震が発生する」とする角田氏の予測を紹介している)。

首都圏に達するMJルートについて角田氏は「来年上半期に首都圏で直下型地震が起きる可能性がある」と警告を発しているが、その根拠は2013年の西之島(東京の南約1000km、MJルート上に位置する)の大噴火である。西之島の大噴火をもたらした熱エネルギーは、その後2014年10月に伊豆諸島の八丈島(東京の南約300kmに位置する)の東方沖でマグニチュード5.9の地震を発生させるなど、日本列島に向かって北上した。

首都圏に到達した熱エネルギーは昨年7月、千葉県東方沖(24日午前9時台に発生した地震の震源に近い)でマグニチュード6.0(最大震度5弱)の地震を発生させたが、震源が深かったことなどから首都圏に大きな被害をもたらさなかった。

だが西之島ではその後も2015年や2017年に噴火が起きていることから熱エネルギーの移送は続いており、「次のピークが来年前半に到来する」と角田氏は予測しているが、24日の連続地震の発生は角田氏の予測の正しさを証明したのではないだろうか。

角田氏が首都圏に甚大な被害をもたらすと懸念しているのは、昨日19時台に発生した伊豆半島沖を震源とする地震である。この地域で発生する地震の震源が浅いからである。伊豆半島周辺では1978年に伊豆半島近海地震(マグニチュード7.0、死者・行方不明者26人)が発生しているが、1930年にも北伊豆地震(マグニチュード7.3、死者・行方不明者272人)が発生している。

特に北伊豆地震は地震断層が掘削中のトンネルを塞いでしまうほどの大地震だった。震源に近い静岡県三島市で震度6を観測したことから、地元では「伊豆大震災」と呼ばれているが、揺れは首都圏にとどまらず、北は福島・新潟、西は大分まで届いた。

伊豆半島近辺でこのところ小規模な地震が多発しているが、24日に発生した地震はここ数年で最大規模だった。北伊豆地震の場合、発生までの約半年間周辺で群発地震が発生していたことから、24日の地震を契機に伊豆半島近辺で地震が今後多発するようになれば、要警戒である。

24日の地震で東海道新幹線は安全確保のために一時運転を見合わせたが、北伊豆地震クラスの地震が発生すれば、この地域を通過する東海道新幹線や東名高速道路などで甚大な被害が発生する可能性が高い。大規模地震の発生を予測することで世の中をいたずらに騒がせるつもりは毛頭ないが、「備えあれば憂いなし」との願いから、拙稿をしたためた次第である。

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2019年6月25日 Business Journalに掲載

2019年7月3日掲載

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