IoT, AI等デジタル化の経済学

第195回「中小製造企業の導入に適したDX(4)」

岩本 晃一
リサーチアソシエイト/立命館アジア太平洋大学

6 アフターメンテナンス

製品・サービスを売って収入を得る、というのが現在の製造業の企業が収益を得る中核であるが、今後、アフターメンテナンスが、販売に次ぐ、第二の大きな収益源として拡大すると予想されている。

製造業は、これまでは「モノ」は売り切りが当たり前であった。モノを売った後、ある一定期間、メーカー側に責任がある故障は無償で修理するなど、製造責任の期間はあったが、その製造責任期間も一定期間が過ぎれば終了し、半永久的に続くということはなかった。売り切りを前提とした制度だった。サービス業でも、サービスを提供すればそれで終わりだった。

だが、デジタル技術の進歩に伴い、モノを売り切りにしない、サービスを提供したら終わりにしない、その後もずっと顧客をフォローする、ということが可能になった。

モノを売った後もずっと顧客をフォローする、すなわち製品の使用中もずっとメーカーが関与する、というビジネスをすることで、それを新たな収益源とし、かつ使用中のモノの性能機能を高めることで顧客の満足度を高め、次もまた自社製品を購入してもらうという好循環が可能になる。

自社ノウハウを生かした新しい第二の収益源として、製品・サービスを販売する際に、アフターメンテナンスも一緒に販売することで、顧客により高い満足度を与えられるため、より高い収益を得ることが可能になる。

そうしたことが可能になる技術的な背景として、アフターメンテナンスを収益の柱にするだけの技術的な環境が整ってきたことが挙げられる。AI、IoT、5G……などの技術を生かしてアフターメンテナンスを提供することで、顧客に新しい価値を提供し、利益を得る手法が確立されてきた。

図1 アフターメンテナンスのイメージ図
図1 アフターメンテナンスのイメージ図

図1にはアフターメンテナンスのイメージ図を示している。左側は、現在、いくつかの企業で先進的に行われている実際のアフターメンテナンスである。基本的に、自社製品を対象に、その製品を製造販売したメーカーが、アフターメンテナンスを実施している。

だが、やがて、このビジネスは、右側のような形態に発展すると考えられている。すなわち、アフターメンテナンスの対象は、自社製品のみならず他社製品まで広く対象を拡大し、事業の実施主体は製造メーカー自身でなく、アフターメンテナンスを専業として実施する事業体になると考えられている。

なぜなら、対象とする製品が多ければ多いほど、アフターメンテナンスを実施する上での基礎データが充実し、その結果、アフターメンテナンスの実施内容がより充実するからであり、かつ収益が安定するからである。

7 おわりに

2013年にドイツでインダストリー4.0構想が発表されてから、世界中でさまざまなDX手法が試みられてきた。だが、さまざまな実証実験の過程を経て、現時点では中小企業には適していないとして分類されつつある導入形態もある。

「システム・オブ・システムズ」は大規模で高価になるので、中小企業には難しいということが判明しつつある。

「つながる工場」は日本でも実証事件が行われたが、技術的に中小企業では難しく、かつメリットが少ないということが判明しつつある。

「サイバー・フィジカル・システム(CPS)」は、現在では多額の投資が可能な大企業の手法となっている。資金力の乏しい中小企業には難しい ということが判明しつつある。

以上、いろいろと手法を述べてきたが、実際にDXを導入した多くの企業を見てきて感じることは、シンプルではあるが、ペーパーレス化が、最も効果が大きいのではないかということだ。

現在でも中小企業の多くは、「紙文化の人海戦術」で仕事をしている。その古く非効率な企業文化を、電子化へと転換させる企業文化の革命の旗、従業員の意識改革の転換となりえる。

DX導入を考えておられる中小企業がいらっしゃれば、まずは、簡単にできる「ペーパーレス化」から始めてみられるのがよい、と私はいつもお勧めしている。

2026年3月18日掲載

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