IoT, AI等デジタル化の経済学

第136回「テレワークを浸透させ、個人・企業のパフォーマンスを向上させるにはどうすればいいか(2)」

岩本 晃一
リサーチアソシエイト/日本生産性本部

2 各種アンケート調査から見えてくるテレワークの実態

(5)日本経済新聞社が2020年9月23~24日に、日経電子版でアンケートを実施し、10,266件の回答を得た。これによれば、生産性が上がった31.2%、生産性が下がった26.7%、変わらない42.4%となった。

生産性が下がった理由
 コミュニケーションがとりにくい 1,714人
 私生活と仕事の切り替えが難しい 1,156人
 仕事の進捗状況が把握しづらい 1,000人
 情報環境が整っていない 743人
 育児や家事との両立が難しい 239人

生産性が上がった理由
 移動時間が減り作業時間を確保しやすくなった 2,437人
 業務を中断される機会が減った 1,919人
 静かな環境で集中しやすい 1,870人
 会議への参加準備が減った 825人
 共有ソフトで情報交換の効率が向上 666人

出典: 2020年10月7日、日本経済新聞電子版「テレワーク、継続か縮小か 社長100人アンケートから」

おおまかにいって、生産性が上がった、下がった、変わらないがそれぞれ1/3ずつという印象である。

(6)商工リサーチが実施した調査によれば、中小企業ではテレワークは十分に浸透していない。

中小企業のテレワーク実施率
 やめた 25.2%
 実施したことがない 49.3%
 実施中 25.2%

テレワーク実施企業のうち実際にやっている従業員の割合(カッコ内はその企業の比率)
 3割未満 43.8%
 3から5割未満 15.1%
 その他 41.1%

出典:商工リサーチ 第10回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査(2020年11月公表)

(7)日本経済新聞社は、参加者との質疑応答を中心とする参加型ウェブセミナー「アフターコロナを考える」を開催した。
そこで出された意見を見ると、テレワークなどに対しては、在宅で勤務するといった外見的・形式的なものではなく、本質は「現在の日本の不効率な働き方を改革すること、快適な労働環境で働くこと」、を求めていることがわかる。テレワークの本質はここにあるといえる。

アフターコロナの働き方として何を期待していますか(複数回答)
 非効率な業務の見直し 220人
 脱時間管理・成果主義 180人

出典:「特集―ウェブセミナー アフターコロナを考える DX時代 組織・役割を再定義」2020年6月9日、日本経済新聞 朝刊 25面

以上の調査から見えてくることは、

1)中小企業では、テレワ-クの実施率が極めて低いということである。この点は、テレワークに関するあらゆる調査を見ても、同じ結果を示している。その背景は、テレワークを実施する環境が整っていないこと、さらに、なぜテレワークをするのか、その目的が明確に会社の上層部から示されていないからと思われる。また、業務内容が、テレワークを前提としていないこともあろう。テレワークができるための環境整備がないまま、コロナになったからいきなりテレワークしろ、といっても、中小企業にはなかなか対応できないのだろう。

2)同様の理由で、生産性が下がったというところも多い。これもまた、テレワークするための環境整備がなされていないにもかかわらず、コロナになったからいきなりテレワークをしたことによる弊害の面が強く出たものと思われる。

3)それでも、テレワークを支持する人、コロナ後であってもテレワークを続けたいとする人がある一定数いるのは、現在の働き方が不効率だと感じていたが、それを発言する機会もなく、改革する機会もなかったが、コロナによるテレワークを機会に、非効率な働き方を効率的な働き方へと転化する「働き方改革」すること、快適な労働環境で働くこと、を期待しているからであることが分かる。まさにテレワークの本質はここにあるといえる。

4)日本企業はこれまで、人間の働き場所の「最適化」はしてこなかった。全員を1カ所に集め、9時から5時まで働かせるという大量集団方式である。明治時代に日本で発生した働き方が、今の日本企業にとって最大パフォーマンスを発揮させる「最適化」なのだろうか。これまでは、平均的で同一的な商品を大量生産する仕組みであったため、人間についても、同一的な人間を大量生産する教育が求められ、企業においても全員を1カ所に集め、9時から5時まで働かせるという大量集団方式でよかったのだろう。これまでは確かに、そうした方法が最適だったのだろう。だが、人間には自分に最適な働き方、最大パフォーマンスを発揮する働き方があるにも関わらず、人間の平均値をとり、未だに、旧態依然とした働き方、過去の働き方を何の疑問もなく続けていた。

だが、コロナがそうした長年の慣行に大きな疑問を突き付けたのである。

今の日本人は多様な個性と才能を持つ。個々人によって最大のパフォーマンスを発揮する「働き方」は全員同じであるはずがない。今回のコロナの影響で、テレワークを実際に体験した人々の中には、その方が働きやすく、仕事の能率も上がることが分かった人々も多いだろう。企業はそういう人々を元の働き方に戻す理由がない。企業が社員を通勤ラッシュに耐えさせる理由がほとんど見当たらなくなったのだ。

次稿では、テレワークが個人や組織のパフォーマンスを上げるためには、事前に用意周到な準備が必要であることを説明する。

*次稿に続く

2021年11月1日掲載