6 国際化の遅れ - ドイツとの比較で見えてくるもの -
6-1 国際化の遅れの現状
まず、対外貿易と対外投資の現状及び事実関係を押さえておこう。日本は、ドイツと比べて、貿易黒字も対内・対外直接投資も小さい(図表1,2)。日本は小さな島国であり、国内に資源はなく、国内市場も1億2千万人しかなく、しかも人口減少・少子高齢化が進行していることを思えば、これは余りに小さい。なぜ、こんなに小さいのだろうか?
実は日本の製造業は、既にその多くが海外に進出してしまっているのである。しかも生産性が高く国際競争力がある大企業から進出した。
1990年頃のバブル崩壊以降、国内市場が伸び悩んだため、成長する海外市場を求めて海外進出が活発化した。しかも大企業ほど海外に進出した。業種では、1位自動車、2位電機、3位化学と生産性が高く国際競争力がある業種から進出した。その結果、そもそも国内には生産性が低い企業・事業所しか残っていないのである。
日本の海外進出は、海を渡るという困難な海外進出でありながら、ここまで海外進出している。
日本では、1990年頃以降、生産性が高く競争力のある大企業から海外に進出した。なかでも自動車産業は、海外進出率は製造業平均の2倍以上であり、50%を超えている。
生産性が高く競争力のある大企業から海外に進出したため、製造業の生産性は、1990年ころから折れ曲がり、従来ほどは伸びなくなった。(図表5)
その内訳を事業所規模別にみると、大企業においても、国内に残っているのは、生産性の低い事業所であるため、生産性の伸びは低下しているが、それでもプラスに向上はしている。だが、大企業未満の規模の企業では、小さい企業ほど生産性がマイナスに低下している。(図表6)
1990年頃まで大企業は系列の中で、中小企業と部品共同開発を行うことで技術移転を行ってきたが、1990年頃を境に、1)大企業がグローバル競争に参加しグローバル調達を始め、良い部品であればどの国からでも購入、2)大企業が海外に進出し、中小企業が国内に取り残された。そのため、大企業と中小企業との共同開発体制が崩れ、大企業からの技術移転が無くなり、小さい中小企業ほど技術革新から取り残されている。
これが(図表5)において、製造業の生産性の伸びが低下してきた背景である。しかも日本では非製造業の生産性がほとんど向上しなかったために、製造業と非製造業の両者を合わせた全体の生産性は、益々、低下していったのである。
(図表7,8)は、日本とドイツの製造業の業種別生産額と業種別の就業者数の推移を示したものである。
ドイツでは、国内生産が増加したが、製造業での国内雇用がほぼ維持されている。恐らく生産性上昇分が輸出に回ったと推察される。かつ製造業以外での雇用が増えたため総雇用が増加している。一方、 日本は製造業での雇用減少分を製造業以外で吸収できていない。