IoT/インダストリー4.0が与えるインパクト

第67回「IoT/インダストリー4.0の普及度に関する日独比較」

岩本 晃一
上席研究員

1 はじめに

ドイツのシュトゥットガルト(Stuttgart)にあるフラウンホーファーIAO研究所(Fraunhofer-Institut für Arbeitswirtschaft und Organisation)では、ドイツ企業を対象とするアンケート調査を実施し、2014年11月に調査結果を発表して以降、2016年11月に第2回目の調査結果を発表し、2年おきの定点観測を実施することで、ドイツ企業の動向を調査している。ここでは、2016年調査に基づき、日独比較を行う。

Fraunhofer IAO(2014), Industry4.0 – a revolution in work organization, 2014 November
Fraunhofer IAO(2016), Industry4.0 – Where Is the Revolution in Work Organization Today?, 2016 November

調査期間は2016年4月6日から6月30日まで、調査方法はオンライン調査である。インダストリー4.0に関心を持つ企業の「意志決定者又はマネジャー」宛てに最初から的を絞り、かつ2014年調査と同じ人に調査票を送っているため、844社から回答があり、回収率は63%に達した。回答企業の業種は、自動車が31%、機械プラントエンジニアリングが23%、電子が9%であり、インダストリー4.0に関心が高い業種が中心である。シュトゥットガルトは、ダイムラーべンツとポルシェの企業城下町であり、東側のミュンヘンにはBMWが立地している。フラウンホーファーIAO研究所は、そうした自動車の産業集積地に立地していることから、同所周辺の企業に調査票を送ったものと想像される。回答企業の規模は、19%がドイツで定義される「中小企業」(51人〜250人)であり、1000人以上の大企業は43%である。回答企業の生産ラインが、自動化されているか、それとも手作業か、という点については、5%が依然として完全マニュアル、8%が高度自動化されている、41%が手動と自動が混ざっている、との回答であった。回答者の属性は、マネージングダィレクターが15%、生産マネジャーが13%、プラントマネジャーが6%などであった。

一方、経済産業研究所では、2017年8〜10月、日本企業1万社に対して、日本の産業界におけるIoTの動向把握を行うアンケート調査を行った。その概要は以下の通りである。

調査概要
実施時期 2017年8〜10月
対象 日本企業1万社
回収 1360社(回収率13.6%)
回収企業の業種別 製造業 434社
金融・保険業 23社
情報通信業 103社
建設業 120社
運輸・郵便業 45社
卸・小売業 177社
その他サービス業 437社
大企業422社 中小企業917社
*業種は、回収企業が「主たる業種」として選択した業種
中小企業は、中小企業基本法に掲げる定義に従った

両調査を比較することで、日独の産業界におけるIoT/インダストリー4.0の普及度に関する日独比較を行うことができる。

私は、ドイツにおいて、産業界におけるIoT/インダストリー4.0の普及度に関する基礎的なデータを収集する調査、しかも定期的な定点観測が行われていたことは知っていた。日本では同様の調査が行われていなかった。私は、2016年11月、ドイツを訪問した際、その調査結果をいただいた。日本でも類似の調査を実施することを考えており、できれば、日独間で調査項目の整合性を取り、日独比較ができるようにしたい、という私の希望を伝え、先方も日本との比較が出来るとして快く協力してくれた。

調査項目については、日本には日本の事情や考え方があるので、必ずしも完全に一致するものではないが、主要点については、比較可能となるよう設計した。

2 経営上の重要課題として採用しているか

ドイツでは、インダストリー4.0戦略を既に持っていて、会社の企画や進行中のプロジェクトに反映させている企業は全体の51%である。

インダストリー4.0戦略を既に持っている企業の割合
インダストリー4.0戦略を既に持っている企業の割合

日本の調査では、「会社の経営方針にIoTに関する記載があるのか」との設問が、ドイツの設問項目と比較可能と思われる。日本では、その比率は14.3%であり、かなり少ない。

Q3. 貴社の経営方針にIoTに関する記載はありますか?当てはまるもの1つに○をつけてください。

日本の調査では、「会社の経営方針にIoTに関する記載がある」の前段階として、「経営幹部が経営上の重要事項を審議する場で、IoTが話題になったことがあるか」との質問があるが、その質問に対し、Yesが38.4%となっている。だが、この数字でもドイツの「インダストリー4.0戦略を既に持っていて、会社の企画や進行中のプロジェクトに反映させている企業」51%より低い。

Q2. 役員会、経営会議など、組織幹部が経営上の重要事項を審議する場で、IoTが話題になったことはありますか?当てはまるもの1つに○をつけてください。

3 IoT/インダストリー4.0分野への投資

ドイツでは、インダストリー4.0関連のプロジェクトへの投資金額では、1万ユーロ以下が1063件と最も多いが、100万ユーロ以上の案件も331件ある。

インダストリー4.0プロジェクトへの投資金額
インダストリー4.0プロジェクトへの投資金額

一方、日本の調査では、設備投資および研究開発投資に関連する設問は2つある。いずれも、ドイツのような具体的な数字では出していない。回収率を上げるためである。

Q21.a. 貴社の設備投資のうち、IoT関連の設備投資額は全体の何%程度でしょうか?当てはまるもの1つに○をつけてください。
Q22.a. 貴社の研究開発投資のうちIoT関連のものは研究開発費の何%程度でしょうか?当てはまるもの1つに○をつけてください。

4 IoT/インダストリー4.0により得られるメリット

ドイツにおいて、IoT/インダストリー4.0を実行した結果、得られたメリットとしては、リードタイムの減少が14.5%、プロセスの質の向上が13.0%、コスト削減が10.0%、売上げ増が7.9%となっている。

インダストリー4.0により得られたメリット
インダストリー4.0により得られたメリット

一方、日本の調査で、これと比較できる設問としては、「在庫の圧縮、業務効率の向上等、コスト削減に効果がありましたか」といういわゆる「守りの投資」へのメリットを聞く項目と、「新しい製品・サービスの提供等、新しい価値の提供やイノベーション創出に効果がありましたか」といういわゆる「攻めの投資」のメリットを聞く項目の2つある。

「在庫の圧縮、業務効率の向上等、コスト削減に効果があった、やや効果があった」は合わせて41.1%、「新しい製品・サービスの提供等、新しい価値の提供やイノベーション創出に効果があった、やや効果があった」は合わせて28.1%となっている。

日本では、前者の「守りの投資」の方が多いことが従来からよく知られていたが、今回の調査でも、同じ結果となっている。

Q11. 貴社において、ITおよびIoTを活用することにより在庫の圧縮、業務効率の向上等、コスト削減に効果がありましたか?当てはまるもの1つに○をつけてください。
Q12. 貴社において、ITおよびIoTを活用することにより新しい製品・サービスの提供等、新しい価値の提供やイノベーション創出に効果がありましたか?当てはまるもの1つに○をつけてください。

5 今後の課題および障壁

ドイツにおいて、「貴社にとってITイノベーションを推進する上で、最も大きな障害は何か」、と質問したところ、「経済上のメリットがわからない」が63%、「専門的知識やスキルを持った労働者がいない」が58%、「技術力が不足している」が41%などとなっている。

貴社においてITイノベーションを推進する上で、最も大きな障害は何か
貴社においてITイノベーションを推進する上で、最も大きな障害は何か

日本の調査で、これに対応する設問は、以下のとおりである。「設備投資・資金」「人材の確保」の2つが最も大きな課題であると回答している。

Q4.a. 貴社にとってIoTの導入、活用上の課題は以下のうちどれですか?当てはまるものすべてに○をつけてください。

「今後のIoTの推進に向けて何が重要だと思われますか」との質問に対しては、「IoTを推進する経営者、トップのリーダーシップ、企業のビジョン策定」「IoTを育成する人材の育成」の2つが最も多かった。

日本もドイツも抱えている課題は、ほぼ同じであることがわかる。

Q15. 今後のIoTの進展に向けて、何が重要だと思われますか?当てはまるものすべてに○をつけてください。

2017年12月11日掲載

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