執筆者 | 関澤 久美(経済産業省) |
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発行日/NO. | 2025年9月 25-P-011 |
研究プロジェクト | 企業ダイナミクスと産業・マクロ経済 |
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概要
我が国への対内直接投資は、他国と比べて極めて低水準である。対日直接投資残高の対GDP比は8.3%であり、OECD加盟国平均の63%を大きく下回っている。投資は、優秀な人材や優れた技術、豊富な資金を呼び込む上で必要不可欠であることから、経済産業省(以下、経産省)でも、関係各所と連携しながら、対日投資呼び込みのための様々な政策を立案し、実行している。
こうした中、対日投資を呼び込む要因については、制度的要因、文化的要因、経済的要因など、様々な要因が考えられ、これらについて定量的に分析した研究も存在する。しかし、どのような要因が対日投資促進に影響するのかについては、明らかでない部分が多い。データを用いて、この要因に少しでも迫ることができれば、我が国が対日投資呼び込みのための弱みに適切にアプローチし、強みを更に活かしていくことが出来るのではないだろうか。
このような問題意識の下、本研究においては、OECD加盟各国の二国間直接投資残高のデータを被説明変数として用い、OECD加盟国への直接投資を決定づける要因について、重力モデルで分析する。なお、ポワソン疑似最尤推定を採用している。要因として考えられる説明変数については、距離や経済規模、FTAの有無なども含め、様々なものを用いているが、特に注目しているのは、法人実効税率と、産業構造の2点である。法人実効税率については、低い方がビジネスコストが安くなるので、自国よりもより低い税率の国に投資するインセンティブがあると考えられる。この観点からは、単に、投資先国の法人実効税率のみを変数とするのではなく、二国間の法人実効税率の差にも着目している。産業構造については、GDPに占める製造業付加価値の割合を説明変数としている。サービス業比率が高く、金融ハブ的な側面が高い国は多くの投資を集めている一方、製造業の高い国は投資を集めにくいのではないか、と考えている。日本は他国と比べて、製造業の割合が高いため、これが投資の呼び込みに不利になっているのではないか、と考えた。結論として、法人実効税率については、投資先国の法人実効税率そのものよりも、二国間の法人実効税率の差の方が、投資に及ぼす弾力性が高いこと、製造業割合が高いことは投資の呼び込みに不利である可能性が示唆された。