日本の中堅企業のパフォーマンス

執筆者 金 榮愨(専修大学)
発行日/NO. 2024年12月  24-P-011
研究プロジェクト 東アジア産業生産性
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概要

近年、多くの国で中小企業の成長を促し、「中堅企業」に、将来的には「大企業」に成長するために支援をする政策に積極的に取り組み始めている(韓国産業技術振興院、2024)。しかし、最近定義された中堅企業に関する研究はまだ少ない。本論文では、経済産業省企業活動基本調査の調査票情報に基づいて、日本の中堅企業のプレゼンスとパフォーマンスを概観し、特徴と経済への貢献を検討するものである。得られた主な知見は以下のとおりである。

(1)独立型中堅企業のプレゼンスは、企業数、従業者数などの面で縮小している。子会社型中堅企業は数や従業者数などの面で拡大している。(2)子会社型中堅企業は、親会社から提供される経営資源のため、効率的で生産性が高いが、イノベーションの面では課題がある。一方、独立型中堅企業は中小企業よりは効率的で労働生産性も全要素生産性も優れているが、子会社型中堅企業よりは生産性が低い。一方、R&Dや特許など、イノベーションに関しては優れている。(3)中小、中堅、大などの企業規模間の移行は少数である。近年、中堅企業から中小企業への縮小は資本規模の縮小によるものである。中小企業が中堅企業、特に独立型中堅企業に移行するとき、イノベーション活動が活発になる。(4)中堅企業は、ウェイト(経済産業省企業活動基本調査内では約20%)は小さいものの、生産性が高く、生産性の成長率もそん色ない。(5)労働生産性成長や賃金上昇への中堅企業の貢献はそれなりのボリュームがある。

ただし、本論文の中小企業は、企業活動基本調査の対象企業(従業者 50 人以上かつ資本金額又は出資金額 3,000 万円以上)に限られることに注意する必要がある。