執筆者 | 梅島 修(高崎経済大学) |
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発行日/NO. | 2023年11月 23-P-034 |
研究プロジェクト | 現代国際通商・投資システムの総合的研究(第VI期) |
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概要
本稿は、USMCA原産地規則に定める乗用車、小型トラック及び基幹部品(以下「自動車等」)の付加価値の計算方法を巡る米国とカナダ・メキシコ間の紛争に係り、一般的なFTA原産地規則、NAFTA及びUSMCAの自動車等の原産地規則を概説した上で、当該紛争の仲裁結果を報告する。
USMCAは、自動車等を無税で輸入する条件である付加価値基準をNAFTAの62.5%から75%に引き上げた。他方、材料の輸入価値をもって非原産価値とする条項を撤廃し、ロールアップを採用した。その経過措置として、輸入国は生産者の申請に基づき2025年7月まで過去の生産量の10%まで付加価値基準を62.5%とするとされたが、米国は、その承認条件として付加価値をロールアップしないで計算することとした。カナダ及びメキシコは、当該条件は交渉で獲得できなかったことを一方的解釈で獲得するものと非難した。
仲裁パネルは、米国の解釈はいずれの条項からも認められないとして、自動車等にロールアップが適用されるとの判断を示した。かかるパネル判断に誤りは認められない。米国は仲裁判断を遵守すべきであるが、当事国間の解決策協議は遅々として進んでいない。