地方創生第1期における製造事業所の存続、発生、消失

執筆者 中村 良平(ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2023年8月  23-P-016
研究プロジェクト 地方創生の検証とコロナ禍後の地域経済、都市経済
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概要

地方に位置する多くの自治体においては、従来からある事業所の活性化や新規事業所の誕生に加えて、出荷額のある製造事業所の誘致は地域振興にとっていまも重要な施策となっている。企業誘致の雇用創出効果はかつてに比べて小さくなっているとはいえ、製造事業所は地域にとって域外マネーを獲得する基盤産業(移出産業)としての役割づけは健在である。ただ高度経済成長期における重厚長大型の産業の誘致とは異なり、地域の比較優位性をできるだけ活用した企業誘致の傾向が近年は増してきていると言えよう。本稿では、そういった観点から製造事業所に焦点を当て、第1期の地方創生の期間(2014~2019年)で、どのような地域において、どのような事業所が消失、撤退や出現、存続しているのかを識別し、その要因を分析する。2014年と2019年の事業所の比較において、付加価値生産性の平均と分布を見ると2014年、2019年ともに存在する事業所の労働生産性が最も高く、次いで2019年に存在する事業所で、最も低かったのが2014年には存在したが2019年には存在していない事業所であった。またロジット分析の(一部)結果からでは、生産性が高い、事業所規模が大きいと消失しない傾向があり、都市化の程度が高いと消失傾向にあることが推定された。他方、発生した製造事業所について、産業別に同業種集積と人口規模で測った都市集積を説明変数とした市区町村単位の回帰分析からは、双方ともに正の効果が示された。