地方創生第1期における企業の参入と撤退:回転ドア型経済と創造的破壊

執筆者 中村 良平(ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2023年8月  23-P-014
研究プロジェクト 地方創生の検証とコロナ禍後の地域経済、都市経済
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概要

地域経済の成長には、生産性の高い企業が新規に市場に参入する一方で、生産性の低い企業が市場から退出し、それにともなって労働力(雇用)などの生産要素も移動するという経済の新陳代謝が必要である。市場に参入してきた企業がその存在期間が短く、撤退と参入が繰り返され、さらに新規参入企業が生産性の向上に寄与しない経済を「回転ドア型」経済という。これは既存企業に比べて新規参入企業の革新性が十分でない場合、開業率が高まっても生産性のレベルがさほど変わらない企業が入れ替わるだけであり、雇用の創出や生産性の向上につながらないことを意味している。対照的な概念として、シュンペーターの「創造的破壊(creative destruction)」による企業の入れ替わり(displacement)がある。市場に参入する新規企業の技術や生産性が高いことで、効率的でない既存企業を市場から追い出すことになる。統計を見ると、大都市の方が開業率も廃業率もが高い傾向があるが、開業率と廃業率の差は大都市圏の方が大きい。地域特性にもよるが、一般に大都市圏の方が立地競合性は高く、回転率は高いあるいはサバイバル期間は短い傾向がある。地方創生の前後で業種別、地域別にみた回転ドア型経済からの脱却の有無を経済センサス(総務省・経済産業省)、東京商工リサーチ(TSR)のデータを用い検証する。