デジタル化の進展と産業の新陳代謝―日本における企業の雇用と生産性のダイナミクス―

執筆者 池内 健太(上席研究員(政策エコノミスト))/伊藤 恵子(千葉大学)/金 榮愨(専修大学)/権 赫旭(ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2023年6月  23-P-007
研究プロジェクト 東アジア産業生産性
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概要

企業の参入退出や、雇用、生産性の変化を通じた産業内の新陳代謝は、一国の経済成長や生産性の上昇をもたらすと考えられる。しかし、ネットワーク外部性を持つデジタル技術の重要性が増す中で、既存企業の優位性を打ち破って新規企業が成長することがより難しくなり、企業間の生産性格差が拡大するのではないかと懸念されている。一方で、デジタル技術など新技術の進歩が速い産業では、新規企業の参入や退出も活発に行われる可能性も考えられる。

本稿では、日本における各産業内の参入退出、雇用創出・喪失、企業間生産性格差などを計測し、デジタル化の進展と産業内の新陳代謝との関係について、欧州諸国の結果と比較しながら論じる。欧州諸国の結果と異なり、日本では、デジタル関連資産を含む無形資産の集約度もあまり上昇しなかった上、産業内の企業間格差もあまり拡大しなかった。欧州諸国との違いを考察することにより、日本の生産性低迷の要因を探る。