COVID-19が研究開発・特許化活動に与えた影響:需要ショック、出願のタイミング、特許化のオプションバリュー

執筆者 山内 勇(リサーチアソシエイト)/長岡 貞男(ファカルティフェロー)/宮崎 大輔(日本特許庁)
発行日/NO. 2022年5月  22-P-013
研究プロジェクト イノベーション能力の構築とインセンティブ設計:マイクロデータからの証拠
ダウンロード/関連リンク

概要

本稿では、日本におけるCOVID-19の流行が、研究開発活動や特許化活動に与えた影響を概観する。特に、売上高の変化と研究開発支出の変化との関係性や特許出願のタイミングの変化、また、COVID-19流行前の発明に対する審査請求・外国出願の動向を確認した。その結果、売上高と研究開発支出の変化には産業分野間で強い相関があることが分かった。これは、パンデミックの下での研究開発の決定要因としての需要ショックの重要性を示唆している。また、パンデミック前後において、発明が審査請求される割合自体にはほとんど変化はなく、かつ審査請求のタイミングは平均的に早まったことも確認された。この結果は、特許化のオプションバリューが大きいことを示唆しており、それが負の需要ショックによる研究開発への影響を緩和する働きを持つ可能性を示している。さらに、COVID-19の蔓延の波に対応して特許出願件数は減少する傾向にあるが、出願の平均的なタイミングに遅れは見られない。これは出願人が蔓延の波が収まっている期間に出願を集中させている(前倒しにしている)ことを示唆している。また、オンライン出願率の高さや出願に関する業務の電子化等もこの結果に影響していると推測される。一方で、日本からの外国出願や日本への外国出願については、COVID-19の蔓延により大きく減少しており、これら外国出願には現地の代理人など関与する主体が多いことや出願コストが高いことなどが強く影響しているものと考えられる。