日米中の科学技術力比較と経済安全保障問題に対するインプリケーション

執筆者 元橋 一之(ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2022年4月  22-P-007
研究プロジェクト イノベーションエコシステムの生成プロセスに関する研究
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概要

日本政府としては、経済安全保障に係る国としての大きな方向性として、①自立性の向上(基幹インフラやサプライチェーン等の脆弱性解消)、②優位性ひいては不可欠性の確保(研究開発強化等による技術・産業競争力向上や技術流出の防止)及び③基本的価値やルールに基づく国際秩序の維持・強化の3点を挙げている。ここでは、日米中の科学技術力の比較を論文情報で行い、上記②のハイテク技術の振興と技術流出の防止に関するバランスに関する政策インプリケーションについて述べる。

米中と比較して、日本の公的研究開発投資の停滞を背景として、研究論文で見た日本の相対的な科学技術力は大きく後退している。また、米中両国が、先端技術についてもデカップリングの動きを見せる一方で、研究者レベルでは密接な連携が見られる一方で、日本のアカデミックは国際化が遅れている。このような状況において、日本においては先端技術、特に遅れが見られるAI・機械学習を含むコンピュータ科学分野で国際化を進める必要がある。

一方で、サイエンスとイノベーションの距離が短くなるサイエンス経済時代において、科学的知見をイノベーションにつなげていくサイエンスイノベーションの段階において、安全保障上問題となる技術流出を防ぐ対策を考える必要がある。そのためには日々科学的フロンティアが拡大しているアカデミックな研究成果をフォローし、安全保障上問題となる技術シーズをピンポイントで拾い上げることができる体制(研究者データベース、目利き人材、シンクタンク機能等)を国内において整備することが重要である。