デジタル貿易推進と東アジアの対応について―WTO・FTAを中心とした多柱的アプローチの必要性

執筆者 中富 道隆(コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2022年4月  22-P-006
研究プロジェクト グローバリゼーションと日本経済:企業の対応と世界貿易ガバナンス
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概要

WTOの立法・司法機能が危機に瀕し、米国・中国を中心とした保護主義的動きが強まる状況下で、WTOのみに依拠する通商レジームは機能しておらず、WTO改革は待ったなしの課題である。

他方で、TPP11、日EUFTA、日米貿易協定、RCEP等が合意されFTAネットワークは大きな展開を見せており、FTAが通商ルール作りの主なツールとなりつつあると言って過言ではない。

このような状況下で、通商を巡るグローバルガバナンスを如何に構成するか議論する重要性は一層増大しており、WTO・FTA・イシュー別の複数国間合意・規制協力・国際標準等を駆使した多柱的なアプローチを活用して対応することが求められている。

本稿では、政策的な重要性と緊急性が高く、多分野における並行的な検討を必要とし、また技術発展とルールとの乖離が著しい「デジタル貿易」に焦点を絞って、WTO・FTA等におけるルール形成の現状と問題点、今後の議論のあるべき方向性を分析するとともに、東アジアの対応を中心に、多柱的な戦略的対応の必要性(WTO・FTAを中心とした多柱的アプローチの必要性)を示す。