中国のCPTPP参加意思表明の背景に関する考察

執筆者 渡邉 真理子 (学習院大学)/加茂 具樹 (慶應義塾大学)/川島 富士雄 (神戸大学)/川瀬 剛志 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2021年9月  21-P-016
研究プロジェクト 現代国際通商・投資システムの総合的研究(第V期)
ダウンロード/関連リンク
備考

改訂日:9月11日、改訂版への差替:9月15日

概要

本稿では、中国のCPTPPをめぐる政策決定と意思表明に関する発言と文書を分析する。それによって、この意思表明の背後にある政治的目的、制度整備の現状、および予想される動きについての検討を行う。中国のCPTPP加入に関する関心は、2020年以降習近平国家主席・李克強首相が明言している。このCPTPP加入に関連して、以下の点を具体的に検討した。①「制度に埋め込まれたディスコースパワー」に代表される中国の国際ルールメイキングに対する基本姿勢、②中国のWTO体制に対する態度、③「渉外法治工作」の類型、④CPTPPの求める個別論点の検討、および⑤米国の不在と英国のCPTPP加入の影響である。政策文書の内容の検討からは、中国によるCPTPPへの参加表明の背後に、「渉外法治工作」強化と称して、①国際的なルールメイキングへの影響力の強化(その背景に、「制度に埋め込まれたディスコースパワー」強化という戦略がある)、②域外適用法制の整備により防御体制の構築、という意図があり、2021年から2025年にかけて、この動きを本格化しようとする意思がうかがえる。中国は、すでに成立したRCEPに加えて、CPTPPに加入することを、FTAAPの構築という最終目標に向けて、「制度に埋め込まれたディスコースパワー」を強化するための重要な布石と考えている可能性が高い。