選択的な外国人受け入れ政策の下にある外国人住民の実態

執筆者 劉 洋 (研究員)/萩原 里紗 (明海大学)
発行日/NO. 2021年3月  21-P-008
研究プロジェクト 人手不足社会における外国人雇用と技術革新に関する課題の実証研究
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概要

日本では長い間、ハイスキルの外国人を積極的に受け入れるとともに、単純労働者の流入に厳しい制限をかけてきた。このような選択的受け入れ政策の下では、海外のような移民問題をある程度避けられると期待されている。しかし、優秀な外国人や日系人であっても、日本人と同等またはそれ以上の生活が送れているかについては、日本人と外国人住民との比較研究が少ないため、はっきりとわかっていない。そこで本稿では、総務省の「国勢調査」(2010年)の調査票情報データを用いて、日本に居住する外国人と日本人の生活実態について、仕事と家庭の面で比較する。分析結果からは、日本に長く生活する外国人住民は、平均的にみて人的資本の質が高いにも関わらず、日本人より失業率が高いこと、正規労働者の割合が低いことがわかった。また、外国人住民の多くが日本よりも出生率の高い国から来ているにも関わらず、婚姻率と出生率が、日本人より低いことも明らかになった。日本は、高度人材外国人の受け入れを積極的に行っているにも関わらず、その人数・割合ともに低水準で、定着率も低いということは、受け入れ時に問題があるというよりは、受け入れ後に問題があると考えられる。これについては、外国人住民に対する就業支援、生活支援が必要である。