デジタルプラットフォームの進展と産業競争力への影響

執筆者 元橋 一之 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2020年11月  20-P-029
研究プロジェクト デジタル化とイノベーションエコシステムに関する実証研究
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概要

経済のデジタル化、特に近年ではAI・IoT・ビッグデータによる新しい情報技術の進展が進む中でプラットフォームビジネスの台頭が見られるが、日本企業の強みとされるモノづくり競争力に及ぼす影響については明らかになっていない。本稿においては、プラットフォームモデルやデジタル経済に関する研究をレビューすることで、デジタルプラットフォームと産業競争力の関係についての検討を行った。生産者と消費者をつなぐプラットフォームモデルの根源にあるのは、消費者サイドに主にみられる直接ネットワーク効果と消費者サイド、生産者サイドの両面市場に見られる間接ネットワーク効果である。ここでは、それぞれの有無によって、タイプ1(インターネットプラットフォーマー型)、タイプ2(生産者エコシステム型)、タイプ3(IoTデータ型)に分類した。更に、これらに従来型のサプライチェーン(パイプライン)モデルを加えた4つのビジネスモデルの経済的優位性とデジタル経済の進展との関係について検討した。その結果として、デジタルプラットフォームの進展が、モノづくり競争力の根底にあるパイプラインモデルを揺るがすものではないが、CPS(Cyber Physical System)などのデジタルとモノの融合化が進むことで、モノづくり企業もプラットフォームモデルにおける競争に晒される可能性があることを示した。

※本稿の英語版ポリシー・ディスカッション・ペーパー:21-P-001