経済基盤モデルによる知識集約型産業・創造的職業に対する地域乗数効果の分析:広域連携の便益

執筆者 中村 良平 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2019年10月  19-P-025
研究プロジェクト イノベーションを生み出す地域構造と都市の進化
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概要

地域科学の分野で伝統的な経済基盤仮説モデルが、地方創生における地域の稼ぐ力や雇用効果の面で貢献している。このモデルは非常に簡便な反面、いくつかの前提条件が課せられている。学術面では、Morettiらの一連の研究でイノベーションを生み出す産業の(雇用)波及効果の大きさが示されたことから、経済基盤モデルが再び脚光を浴びている。しかしながら、その乗数効果のメカニズムが不明瞭な点や交易産業(移出産業)を先験的に決める方法には問題がある。

本稿では、経済基盤モデルに基礎を置くものの、今日の地域発展の原動力となる知識集約型産業と創造的職種における地域特化に着目する。経済基盤モデルを展開するなかで、二時点のデータを使って経済基盤乗数を推計し、基盤乗数値の地域間の異なりを知識集約型産業や創造的職種の地域集積によって説明することを試み、地方創生における産業振興のあり方を考える。用いる就業者のデータは、経済センサス中分類と国勢調査の産業と職業の中小分類についての抽出統計をそれぞれ市町村単位と都市圏を含む地域就業圏域単位に集計したもので、この比較から広域的視点での乗数値の変化を考察することによって政策の広域連携の効用を示す。