医療・介護産業におけるサービスの質と経営マネジメント指標に関するサーベイ

執筆者 乾 友彦 (ファカルティフェロー)/伊藤 由希子 (津田塾大学)/宮川 努 (ファカルティフェロー)/佐藤 黄菜 (東京工業大学)
発行日/NO. 2017年7月  17-P-022
研究プロジェクト 無形資産投資と生産性 -公的部門を含む各種投資との連関性及び投資配分の検討-
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概要

医療・介護産業は、その活動内容が公的財源や法制度により規定される「非市場型」サービスの代表例である。非市場型サービスでは、サービス提供者側への税制優遇・補助金などのソフトバジェット問題があることから、効率的な運営には事業者の経営マネジメント力、そしてそれをモニタリングする指標が必要といえる。ただし、生産管理・企業理念・人事管理などの経営マネジメントは非財務的な情報であるため、これまで、指標化・比較化は困難であった。しかし、Bloom and Van Reenen (2007)の経営マネジメント指標の国際比較研究を端緒として、国・産業を問わず、指標化をすすめるプロジェクトが進行している。

日本では、医療サービスについては非営利法人・公的・公立組織が参入し、介護サービスについては、営利法人・非営利法人・公立組織が参入するなど、経営形態が多様である。その中で、制度上は、個々のサービスごとに均一の価格(診療報酬・介護報酬)を設け、サービスの形式的平等性を担保するよう試みている。経営マネジメントの多様性によって、サービスの質が多様であるという事自体が仮定されていない。

しかし、医療・介護サービスにおいても例外なくサービスの質が多様であることや、生産性も多様であることは、すでに多くの先行研究が明らかにしている。本稿では、これらの議論のサーベイを通じて、経営マネジメントがサービス内容や事業所の形式に関わらず重要であることを示す。そして、特に介護サービスについては、分析例の蓄積が浅いことから包括的にとりあげる。さらに介護サービス事業所へのヒアリング調査を通じ、Bloom and Van Reenen (2007)に準じた医療・介護サービスのマネジメント指標(質問内容・評価方法)について、提案する。