国際投資協定上のパフォーマンス要求禁止条項の法構造

執筆者 玉田 大  (神戸大学)
発行日/NO. 2012年7月  12-P-012
研究プロジェクト 国際投資法の現代的課題
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概要

投資家が海外投資を開始・継続する際に、投資受入国が特定措置の履行を要求することがある(たとえば、ローカルコンテント使用要求、輸出制限要求、技術移転要求など)。これを履行要求(PR:performance requirement)という。投資受入国によるPRは、対内投資を通じて自国企業や自国民に利益を還元させるためにとられる措置であるが、国境を越えた貿易・投資活動を阻害・歪曲させるものであり、国際投資協定はこれを禁止する条項を設けている(PR禁止条項)。本稿は同条項の法構造を広く分析した上で、日本の国際交渉に向けての提言を行うものである。

第1に、PR禁止条項の規定方式につき、北米型(具体的な禁止要求内容を網羅的に列挙する方式)と欧州型(PR禁止を公正衡平待遇条項に組み込んで抽象的・一般的に禁止する方式)に分かれる点を指摘し、それぞれの長短を指摘する。日本は米国型を採用しているが、締結した協定によっては最低基準の禁止(TRIMsレベル)に止まる。第2に、PR禁止条項の解釈・適用が争われた投資仲裁例を分析し、PRに関する争点を明らかにする。特に、北米型では規定方式が特定的・具体的であり、仲裁廷が「形式」判断を行っている。また、PR禁止条項の適用可能性に関して「関連性」要件が重視されている点を指摘する。第3に、以上の分析を踏まえて、日本が今後締結する投資協定やFTAにおいて採用すべきPR禁止条項について提言を行う。