執筆者 | 安藤 浩一 (日本政策投資銀行) /宇南山 卓 (ファカルティフェロー) /慶田 昌之 (立正大学) /宮川 修子 (リサーチアシスタント) /吉川 洋 (研究主幹) |
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発行日/NO. | 2010年11月 10-P-018 |
研究プロジェクト | 少子高齢化と日本経済-経済成長・生産性・労働力・物価- |
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概要
少子・高齢化のもとでの経済成長のエンジンは「プロダクト・イノベーション」である。個々の財・サービスの市場は、初期の低成長期を経て、急成長のフェーズを迎え、その後は需要が飽和して成長が鈍化するというS字形の成長パターンを経験する。その成長の鈍化を回避し、マクロ経済の成長を続けるには新しい財・サービスの創出が必須である。プロダクト・イノベーションの重要性は多くの研究で認識されているが、影響を計測する方法は確立されていない。需要動向が経済成長を規定するような環境では、標準的な技術進歩の計測方法である「成長会計」は十分に機能しないため、スタンダードなTFPの計測とは異なる方法が必要である。本稿では、産業構造の変化による検証、ミクロデータによる事例研究、中間投入を通じてプロダクト・イノベーションの影響を分析した。戦後の日本経済は、新たな財・サービスの誕生を通じた産業構造の大きな変化を経験してきた。これはプロダクト・イノベーションの重要性を端的に示すものである。また、小売店の売上データを利用した事例研究では、プロダクト・イノベーションの根源的な制約が需要の不確実性であること、規制緩和は成長促進策となりえることを示した。さらに近年のIT産業の発展がもたらした波及効果としては、他の産業のプロダクト・イノベーションを促進したことを示した。本稿で説明するプロダクト・イノベーションを成長の源泉とする観点からは、今後の日本の目指すべき方向は、より先鋭的な技術の開発を目指すだけではなく、「ボリューム・ゾーン」と呼ばれる新規市場の開拓が重要である。