輸出ブーム期における輸出企業のパフォーマンスと投資行動

執筆者 八代 尚光  (コンサルティングフェロー) /平野 大昌  (京都大学経済研究所先端政策分析研究センター)
発行日/NO. 2010年6月  10-P-005
研究プロジェクト 企業活動の国際化と国際競争力に関する調査研究
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概要

2002年から2007年末までの戦後最長の景気回復は、主に堅調な輸出の拡大に支えられたものであった。こうした輸出主導の景気回復期において、輸出企業が単純に需要ブームを謳歌したのか、それとも中長期的な競争力の強化に資する投資行動をとったのかを検証することは、日本経済にとっての輸出ブームの意味を評価する上で重要である。本研究では輸出ブーム期の前半に相当する2002年から2005年の期間における輸出企業のパフォーマンスと幅広い企業行動を、国内企業との対比で観察した。輸出企業はこの間に非輸出企業より明確に高い収益性を享受したほか、5%以上高い生産性の成長を実現したが、こうした生産性にかかる優位性は大・中堅規模の輸出企業のみに認められた。中小輸出企業はその輸出先がアジア地域に集中していることや、輸出経験年数が比較的短いことから、輸出活動が競争力の強化に帰結していない可能性がある。一方で、輸出企業は企業規模にかかわらず本社機能部門の強化や設備投資、イノベーション活動を非輸出企業と比較してより旺盛に行っており、総じて本源的な競争力の強化に取り組んでいたと考えられる。